コラム

新生児の聴力検査

◆ 聴覚スクリーニングについて

新生児の聴覚障害の頻度は、中等度以上の両側聴覚障害が1000人出生中の1人~2人に起こります。米国では、新生児全員を対象とした、聴力スクリーニングの法制化を全50州中、39州で施行しています。スクリーニング実施率は、平均93.3%(高いところでは99.9%)と国家的規模で普及率が高まっています。
また、最近では米国の小児科学会専門誌である「PEDIATRICS」誌にて、「米国小児科学会として、全新生児聴力スクリーニングと早期療育の実施勧告」をしています。
ちなみに日本国内で、公的に行われている聴覚のチェック方法は、小児科医が3~4ヶ月乳児健診の際に母親への面接と2~3才児健診の条件反射が行われるのみです。厚生労働省から、聴覚スクリーニングの必要性や研究班の報告を踏まえ、「新生児聴覚スクリーニング実施要綱」が平成12年10月に出されました。(各都道府県・政令指定都市へ)。要綱をもとに、いくつかの地域で新生児聴覚スクリーニングのモデル事業が、行われ始めています。

◆ 生まれたばかりの赤ちゃんに、聴力検査が必要なのはなぜ?

□ 言葉の発達には聴力が必要です。
赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいる時から、話しかける言葉や物音を聞いて育っています。これらは脳に学習され、言葉を覚える能力が発達し、言葉の意味を理解できるようになります。

□ 聴覚障害を早期に発見できます。
聴力検査を行わない場合、2~3才頃になって言葉がおくれることで、難聴に気づくケースが多く、言葉を覚える大切な時期によく聞こえずに過ごしてしまうと、言葉を覚え音を聞き分ける能力や情緒が、十分に発達できない恐れがあります。

□ 早期に治療・訓練を開始できます。
障害や異常が早く発見できれば、治療とトレーニングによって、言葉の習得のハンデキャップを最小限に抑えられることができます。

◆ 検査について

新生児の聴力検査は、35dB(ささやく程度の音の大きさ)のクリック音を聴かせ、聴性脳幹反応を検出する検査で、難聴の早期発見、神経学的成熟度の判定、脳幹神経の反応をみています。この検査は聴覚障害の可能性を見つけるための検査で、確定診断を行うための検査ではありません。
赤ちゃんのコンディションによっては、正常聴力の場合でも“要再検”と判定してしまうことがあります。これは、あくまで精密検査が必要であるということで、ただちに聴覚障害を意味するものではありません。小児の聴覚障害を診断できる専門機関で確定診断を行う必要があります。当院では、信頼できる専門の先生をご紹介いたしますので、必ず、早期に再検査をお受けください。
もし、障害があったとしても、その原因・程度はさまざまで、早期に発見し、早期に適切な処置を施すことにより、言語能力が正常レベルに近づくことも報告されています。障害や異常が早く発見できれば、治療とトレーニングによって、言葉の習得のハンデキャップを最小限に抑えられることができます。

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